川島さん検証してますか?

出典: CLUB103ウィキ

103系の評価が鉄道ファンの間でがた落ちになったのは、曽根悟さんと川島令三さんの記事によるところが大きいと思っています。曽根さんも川島さんも素人ではなく、研究や取材を通じての意見を記事にしているとは思うのですが、曽根さんが常磐線の103系がスーパーひたちの足を引っ張っている等と言う事を検証していくと、どうも実際に調査したりした結果をもとに記事を書いているのではなく、103系は性能が悪いという先入観から記事を書いているように思えます。

今回、川島令三さんの「関西圏通勤電車徹底批評」という2004年12月に発刊された本を入手したので、その中身を見ながら103系を酷評している川島さんが、実際にどの程度検証をしているのかを見てみたい。もっとも、川島さんの本は、どちらかというと子供心によく描く願望などを元に具体化したケースが多く、実際に出来るか出来ないかという点はあまり配慮されていない。こうなれば便利だなぁと言うのが多いので、車両性能などについても、あまり深くは考えていないと思われる。特に高速運転をすれば良いという主張で、単に車両のみを高速対応すればそれで良いという考えでの主張が多く、線路状態・制限速度の問題、信号機の問題、保安設備の問題、電気線の問題、電力消費量の問題等々は全く配慮されていないと言える。

この本にも、回生ブレーキ車にすれば出力アップ分は補えるとか、加速の良い車両を入れた方が一定の速度までの時間が短く力行時間が少ないので電力消費量が少なくて済むとか、使う電動機の条件が関わる問題なのに、全てひとまとめにして同じ環境として考えている。これらを見る限りでは、きっちりと検証はしていないのだろうなと思う。

ちなみに、国鉄では「運転整理1分」とか良くホームで聞きますが、あれは特定の列車に遅れが出た場合に、その列車がどんどん遅れていくことを防ぐために、ある時点で全列車の運転間隔を一定に戻そうとします。具体的に言うと、遅れが発生している列車が1分遅れで走っていたら、先行する列車は全て最寄り駅で余計に1分停車します。それによって、列車の間隔を等間隔に戻して特定の列車だけに乗客が偏り、その列車が更に遅延するのを防ぐわけです。

こんな場合ってのは、列車が一斉に動き出すケースが発生すると思いますから、回生ブレーキ付き車を揃えたとしても、それに耐えられる起動電力を供給できる電力設備が必要になってくるのではないかと思いますね。だから、電力消費分は回生ブレーキでまかなえるってのは、ちょっとおかしな理論じゃないかなぁって感じますよ。

目次

高加速車両はどのくらいの実力を持っているか

ここでは、阪神電車の5500系などの高加速電車の性能を引き合いに出して、高加速電車を使うとこれだけメリットがありますよと言う事が書かれている。
阪神のジェットカーは起動加速度が4.5km/h/sだったが、最新の5500系は起動加速度自体は4.0km/h/sに落としているが、その加速度を維持できる速度が高くなったので結果的には平均速度などは上がっている。
石屋川-新在家間0.9kmでの運転曲線らしき解説もあり、85km/hまで加速して4秒程度の惰行の後に減速するらしくて駅間を55秒で走れるらしい。(旧タイプのジェットカーだと59秒)
同じ状態を大阪環状線の103系で比較しているが、例に出している玉造-森ノ宮-大阪城公園の各駅間の所要時間を90秒と書いている。
だが、手許にあるJR西日本の2002年10月5日改正列車運転時刻表(その2)によると、このどちらの区間も内回り・外回り共に80秒で走っているのが記載されている。
大阪環状線時刻表
拡大
大阪環状線時刻表
ただし、ラッシュ時なので各駅での停車時間が日中の20秒ではなく30秒になっているのが確認できる。
これらは遅れなどを見込んでの余裕ダイヤと言えるのだが、実際には30秒も停車しなくて良い駅が多く、そのあたりを考慮して所定よりも若干スピードダウンして隣駅まで運転しているのではないだろうか?で、あるならば川島さんが書かれた90秒かかっているというのとつじつまもあう。
ただし、これは車両の性能が悪いからではなく、早く着いても仕方ないからゆっくり走ってるだけであり、川島さんの本ではあたかもそれが103系の性能であるが如く記載されている。
まぁ、そう言いたい気持ちはわかるが(笑)
で、あれだけ速いと言われるジェットカーとは0.9kmの駅間だと旧タイプで20秒ほど、5500系で25秒ほどの差がでるようで、なるほどそれは凄いなと思う。

環状線で走れるの?

よく民鉄の車両を国鉄やJRの路線上で走らせるシミュレートが出てくるのだが、川島さんは阪神のジェットカーのような電車を環状線で走らせたら1駅で約30秒短縮できるんだと。
で、一回り31分運転が可能なんだって。
すごいですよね、ジェットカーを8両編成で走らせるんですよ。
現状の4M4Tを8M0Tにしちゃうんだから、これでスピードアップができなきゃ嘘でしょう(笑)
で、8M0Tで環状線をぐるぐる回って大丈夫なの?
いえね、主電動機が熱を持つんじゃないかと思ってさ。だって、阪神電車ってちょっと走ったら優等列車待ちで何分も止まるのよね。つまり環状線で本に書かれてるような惰行がほとんどない力行-制動のオフブレーキ運転をした場合、主電動機は連続で通電される事になる。その状態で走らせるのかどうか、たぶん検証してないでしょうね。
ちなみに、阪神電車の平日8時台に梅田を出る普通電車の例をあげてみると、梅田8:13-尼崎8:27/8:30-甲子園8:38/8:42-西宮8:47/8:52-御影9:05/9:15-元町9:28と、途中駅で22分も停車している。75分の所要時間中22分というのは実に3割もの時間を停車に充てているのだ。
これは日中でも同じで梅田9:22-尼崎9:35/9:44-西宮9:59/1006-御影1018/1024-元町1037と同じく75分中22分を停車に充てている。要は主電動機を冷やす時間がここに生まれてくるわけだが、環状線でぐるぐる回る場合、待避という概念が基本的に無いため、長く停車できても天王寺での2分程度となろう。こう考えると、とてもオフブレーキ運転ができる環境には無い。
となるならば、たとえジェットカーを使ったとしても、ノッチオフからすぐに制動に移る事は不可能で、一定の惰行時間を見込む必要があるだろう。まぁ、私もこの計算をしたわけじゃないので、この辺は推測でしか無いわけだが、極めて常識的な話をしているわけなんで・・・
そういう余裕時分を見込んだ場合、ジェットカーでどの程度運転できるのだろうか。
環状線を31分運転できたとしても、3割の余裕時間を考えると、環状線一周44分運転で停車時間13分となる。ジェットカー8Mを使うより103系の4M4Tの方が早いじゃん(笑)
本来は、こうやって使用線区に応じて使えるか使えないかを見ていかなければならないのに、阪神本線での性能がこうだから、他の路線でも走れると言う安易な思考が大きな間違いを生んでいるように思う。
ちなみに、主電動機の熱問題以外にも8M0Tで走ると言う事はピーク電流がすごい事になりそうで、それを回生ブレーキでまかなえば良いと言ってるが、果たしてそうだろうか?
このあたりもきっちりと試算したものを見せてもらいたいという風に思う。
き電セクション内の全列車が一斉に力行を始める事はまず無いだろうが、設備の建設計画を立てる上では、それに近い状況が発生しても耐えうるものが求められる。計算通りに回生ブレーキによる電気を力行車が使ってくれるかどうかはわからないからだ。
と、言う事は設備投資も非常に大きくなるのだが、オフブレーキ運転が出来ない以上、現状の103系と比較しても1駅で20~25秒のアドバンテージを持つことは不可能で、せいぜい10秒~20秒であろう。
となれば、103系を6M2Tで走らせたのとさほど変わらないのではなかろうか?

阪神電車は300%乗車を想定していない

つい最近(2008年10月)に昭和46年に出た阪神5271型の説明書を入手した。阪神電車の内部資料で一般公開時に販売されたものと思われる値札が付いていたが、その値段よりも遙かに高い値段でゲットするはめになったが、それでもジェットカーの性能を検証したいと思ったから、こういう資料についても集めていきたいと思っていたところだったのでちょうど良いタイミングだった。
中にはお目当ての性能曲線図は無かったが、定員乗車時の加速力曲線図や、応荷重装置を使った時の限流値セット値を空車・積車について書かれていて、結構性能をひもとくには重宝する内容は載っていた。
この中で一番興味があったのが阪神電車の応荷重装置は、空車時から定員乗車時までを想定してあり、国鉄で言う積車(300%乗車時・1車20t荷重)とは全く条件が異なることがわかった。
また加速力曲線から、定員乗車時の加速力は140kg/t程度、並列時の電流は1000Aを超えることがわかった。
で、5271型は主電動機が75kwクラスで、一時間定格電流は285Aなんだけど、応荷重装置を使って空車時390A~定員時470Aで限流値が変化するようになっているとある。
一時間定格電流が285Aが定員時に470Aということは、定格の165%の電流が流れることになる。103系で言うとMT55の一時間定格電流は330Aだから544A流してるのと同じ条件だ。
MT55が540A流した時の引張力は18500kg程度。。。4両編成で車両140t・乗客28tの合計168tを運転する場合、加速力は18500÷168=110.12kg/tで、30.9で割れば加速度が出るので計算すると3.56km/h/sとなる。
もちろん、全電動車だから空転とかも防げると思うので、103系でこういった運転が出来ないのは承知の上だけど、それだけ電流を流して良いのなら、103系・MT55でも相応な運転性能は得られるんだよって。
仮に、これで運転したい場合は、バーニア制御にするなど、ある程度考えるだろうし、編成の自由度は減るけど、現在モハ102に付いている冷房用電動発電機をクハ103に持ってきても良い。
ただ、このやりかたは、無理無理その性能を活かすための方法で、民鉄ではそういうことも平気で出来るだろうが、国鉄では汎用的に使うことが求められるので、どんな編成になっても効率の良いシステムになるように考えるから、絶対にあり得ないんだけどね(笑)
結論的に言うと、阪神電車5000系ジェットカーは、定員乗車までは4.5km/h/sの加速度は出せるが、定員を超えると性能は落ちていき、300%乗車時は3.5km/h/s程度の加速度しか出せない(定員乗車時の140kg/tから300%乗車時を計算)車両であり、国鉄で使う場合は300%乗車時を想定して車両の仕様が決められるわけで、ジェットカーを国鉄で使う場合の加速度は4.5km/h/sではなく3.5km/h/sとしてしか使えないということになる。
これは、上の環状線一周時間にも大きく関係してくることで、国鉄線を走らせるのであれば、4.5km/h/sという数値は使えずに、3.5km/h/sという数値しか使えないことになる。
オール電動車でですよ(笑)
103系の6M2Tが約3.0km/h/sで、8M0Tだと約4.0km/h/sだから、別にジェットカーなどにする必要ないじゃんって感じです。

思い込みの怖さ

この辺は、性能の良い電車を入れたら魔法を掛けたが如く輸送改善ができると思い込んでいる事が問題のような気がする。
時速250kmを出せる10tトラックが出来たから、東京-大阪の貨物輸送が3時間程度でできると言ってるのと同じ感じで、道路交通法上認められた速度でもないし、東名高速道などの最高速度を考えても、この速度で走れるわけがない。
だから、これくらいあからさまにダメってわかればみんなわかるんだけど、鉄道系は特に運転理論に弱いので、運転性能ってのを客観的にはかるすべをみなが持っていないと感じる。
それは、定格速度が高いから高速運転できるだとか、起動加速度が高ければ高加速運転できるとか、性能ってのは曲線のグラフ上に表されるんだけど、その1点を取った数値だけで車両を論じてるのが今の趣味界の車両性能論だと思う。
これらは、運転理論が浸透すれば「なんだ、こうやって計算したら求まるジャン」ってのがわかってもらえ、客観的に比較がしやすくなるんだが、これは私も広めていきたいと思うし、そういう考えで比較してくれる人がどんどん出てきて欲しいと思っています。
そうすれば、川島本のように「主観的な数値の羅列」を見ても「あ、ここは考え違いしてるな」とかわかるわけですが、今のままだと川島本に書かれてることが本当だと皆さん思ってしまうんですよね。
正直、そこが怖いというか。
検証できないことを勝手気ままに書ける環境がどれだけ恐ろしいモノか考えてみて下さい。
我々がきっちり検証する事で、著者が執筆する際に「いい加減な数値は出せない」という警戒感を与えれるようにならなければならないと思っていますが、そのためには、我々読者が理論武装するしか無いのです。

JRの電車も性能は良くなった

  • 103系の加速度は2.0とされているが、現実には1.8程度である
いや、だから、MT比は?時速何キロまでの加速度?103系は時速35キロくらい超えたら加速度は下がっていくよ。だから、起動加速度が2.0km/h/sでも時速60キロまでの所要時間は30秒以上かかるんだけど、そういうからくりをわかってくれてるのかなぁ。ちょっと疑問
  • 103系は加速だけでなく高速性能でも劣り、100キロまで出せない、平坦線の均衡速度は95キロでしかない。
95キロしか出せない車両が、なぜ100キロで走れるのだろう。4M4Tでの速度種別記号はC8 つまり10パーミル上り勾配で88km/hが均衡速度なんだけど、それを考えたら平地で95km/hってのはありえないんだけどなぁ
均衡速度というのは、車両の性能上、それ以上にできない数値を言うんだけど、意味を理解せずに使っているのかもしれない。
ちなみに103系が4M4Tで時速100キロに要する距離ってのは冷房車の応荷重装置使用100%乗車で約2.8kmかかるのよね。
だから、3キロ程度の駅間じゃ出せないよ。
ただ、出せないから車両の性能が100キロに対応していないと言うのはおかしな話でしょう。
そもそも、103系は・・・と書いてるけど、MT比によって性能は全く変わるのに、そういう基本情報すら何も示していない。
ちなみに100キロまでに要する距離は4M3Tでは2.4km、6M4Tで2.3km、4M2Tでは2.0km、6M2Tだと1.8km、8M2Tだと1.6km、CS40使用の8M2Tだと1.4km程度となる。
だから、駅間の短い場所では自ずと最高速度も低く、これは103系に限ったことでも無く、40km/hや50km/hまでの加速度は103系も201系もあまり変わらないのだから、201系なんかが駅間の短いところで運用されても、結局100km/hなんて出せやしない。
だからといって201系の均衡速度は90km/hだ!と言うのは変でしょ?
川島さんの本も他の批判書もそうだけど、条件が書かれていない以上、信憑性すら検証できない状態、つまり感覚でものを言ってる程度でしか読めない。
主観と客観が入り交じったら、もう何がなにやらわからなくなるけど、103系の性能についての話なんて、まさにそういう感じがする。