103系が山手線向けという大嘘

出典: CLUB103ウィキ

103系が山手線向けであるという表現が初めてなされたのは、鉄道ピクトリアル1987年11月号「101系特集」の曽根悟東京大学教授の「101系電車の評価と日本の通勤電車」という記事が最初であろう。その後、この大嘘はどんどん広まってしまったが、福原俊一氏のご尽力により、ようやく103系が当時の汎用的通勤電車であった事が認知し始めた。それらについて少し書いてみたい。

目次

曽根氏の主張1

ピクトリアル1987年11月号からの引用
(2) 103系
高性能化を断念して中央線に大量の6M4Tの101系を投入し続けた結果、中央線の完全101系化の見通しがつき、次は山手線の番となった。当時の山手線は8両編成で、72系等の5M3Tを置きかえるには、101系では6M2Tとなり、駅間距離の短い山手線では主抵抗器容量にも不安があった。そこで山手線には101系を一旦投入した後、山手線向きの特殊な経済車として、高速特性を落し、低速時の引張力を増した103系に置きかえることとした。この103系は平均駅間距離が1.3km程度の線区を、実用最高速度75km/h程度で走る場合に、MT同数、つまり8両なら4M4Tで走ると経済性が高いという、当時の山手線専用設計車[1]で、現時点で言えば大阪環状線専用車と思えばよい特殊仕様車であった。
当然の成行として、103系が山手線に行渡った後は、当時関西から要望のあった「105系」、つまり165系の歯車比を5程度にして、空気ばね台車を用い、高速特性も大幅に向上した足回りの通勤電車が作られるものと期待されたのであるが、どうしたわけか本社は地方の部内者や著者のような部外者の要望を頑なに拒否し続け、遂にこの特殊仕様車を3500両近くもかかえてしまうことになった。これは、今後相当長い期間にわたり、通勤電車の高速化と快適性向上[2]の足を引張り続ける事になろう。

疑問点

まず山手線専用設計という文字で、注釈にあるとおり当時の臨時車両設計事務所関係文献に記載があると書いていながら、同じ鉄道ピクトリアル2005年8月号「惜別JR東日本103系」では、「103系はもともと、どういう車両だったのか」と言う記事を立ち上げており、自ら山手線専用設計と言っていながら、本当の所はわからない・・・というように、非常に無責任な結びとなっている。
まぁ、間違いを放置したまま持論を主張し続ける事に比べたら雲泥の差で曽根氏の方が潔いのだが、この20年の間に103系が山手線専用設計であったと広めた罪は重い。

曽根氏の主張2

ピクトリアル1995年3月号からの引用
103系をどうするか
103系の生い立ちと現状
もともと103系は、山手線のような平均駅間距離の短い路線を、最高速度80km/h程度で、MT同数で走ると経済的になるように設計された、国鉄としては珍しく汎用性を犠牲にして、線区の特殊性を反映させたしゃりょうであった。
設計から35年近くも経た現在、技術的に陳腐化したことはやむを得ないとしても、本来は8両編成を50本ほど作れば十分だった特殊車を長年にわたって3000両以上も作ってしまったために、いま当初の条件に合う使い方がされているのは、JR西日本の大阪環状線の250両だけになってしまった。

疑問点

相変わらず山手線用?
ここでも特殊車という表現を用い、103系が8両編成50本で十分(山手線の所要数)であると書くなど、山手線用という事を暗に言っている。
ちなみに、冒頭で「山手線のような~設計された」の部分は的を射ている。
なぜ、それがわかっていながら、山手線専用車なんて言い方をするのか私にはわからない。
山手線と同等の駅間距離を抱えた線区は首都圏には山のようにあるのだ。
高速化はギア比を変えずとも可能
記事自体は全体的に103系批判だが、最新の形式のアコモや性能と比べての話なので、当然そういう書き方になるのは仕方ない所だと思う。特に103系批判で多い高速特性の改善については、歯車比を変える事を提案している。
現状の15:91=1:6.07という歯車比を17:89=1:5.2や18:88=1:4.9程度にして高速走行ができるようにしたらどうだという提案だ。
なるほどおもしろい提案ではあるが、ここで言われる60km/h程度から上の高速性能の悪さについては、1990年にJR西日本の研究発表にて弱め界磁35%域の改善による成果が明らかになっており、わざわざ歯車比を変えて他の103系と併結できないような、それこそ特殊車両を作る必要は無い。
しかも、歯車比を変えると低速域の加速が悪くなるが、それに対しては限流値増にて対処するとのこと。
また、常磐線などではM車比率を上げて10M5Tで走れば良いと書いてあるが、限流値増と相まって、使用電力のシミュレーションはしているのだろうか?
ほんとに103系は邪魔なのか?
常磐線ダイヤ
拡大
常磐線ダイヤ
そして、そのスピードアップによる効果がどの程度のものなのか、その当たりが全く示されていない。
この記事中、常磐線の特急の邪魔になっている点が指摘されているが、どの程度邪魔になっていて、103系を高速改造したら、どの程度改善されるのであろうか?もともと特急などの優等列車は都心部に近づくと速度を他の列車に合わした平行ダイヤにする。
103系が邪魔になるのは上野-取手だが、待避駅が北千住・松戸・我孫子と3箇所もある。
30分間隔で時速120キロの優等列車が走ったとして、取手まで40キロで所要時間が20分、運転間隔30分と足して50分以内に完走できたら待避なしで走れるが、103系が上野-取手を走るのは約40分だから、仮にスーパーひたちとフレッシュひたちが30分間隔で交互に走ったとしても、103系はこれらの特急の邪魔になることなく上野-取手を走る事ができる。(ただし1~2本/30分のみね)
それ以外は、北千住・松戸・我孫子で待避する事になるが、30分に5本程度の列車は詰め込む事は可能だ。
2007年7月現在、日中の常磐線は、中電が4本、快速が3本、特急が2本なのだから、30分に5本走れるダイヤを構成できるなら、何の問題も無いわけだ。
要は103系が足を引っ張ってるダイヤではなく、元からそういう平行ダイヤを組んでいるわけであり、時速120キロ運転を仮に始めたとしてもダイヤを工夫する事により103系でも十分使える事がわかる。
スーパーひたち等が103系の足が遅いからスピードアップできないというのは、もう少し検証して頂きたいと思う。
右に添付してるのは、1992年3月14日ダイヤ改正での常磐線ダイヤで、17時~18時の間をピックアップしてみた。
夕方のラッシュが始まる直前なので、比較的本数が多く設定されているが、17時に上野を出るスーパーひたちが取手駅を通過するのが17:24なのが読み取れるかと思う。
上野-取手が40キロで、その間を24分で走ると言うことは、表定速度は100km/hだ。
確かにスーパーひたちは時速130km/hを出せるのだろうが、都心のゲタ電区間に入ってからなんだから、時速100km/hで十分じゃないのか?
103系が足を引っ張ってるというような書き方がされているせいで、この区間のスーパーひたちは時速50km/hや60km/h程度で走ってるイメージを与えてはいないか?
実際には、時速100km/hで走れてるんだから、足を引っ張ってるとは言えないことが証明できていると思う。
なお、1996年の京葉線ダイヤを所持しているが普通列車が特急の邪魔になってるような場所は少なく、工夫次第でまだまだ特急の速度は上げれるように見える。

曽根氏の主張3

鉄道ジャーナル1993年9月号からの引用
最近の通勤形電車における技術とサービスの設計思想
過去を振り返って車両設計を考える
●103系の轍を踏むな
山手線の8両編成を経済的に成立させるための、国鉄としては特殊な車両として設計したのが誕生時の103系であった。それが、いつのまにか通勤用の標準車のように位置づけられ、民鉄の通勤車のほとんどが空気ばねつきの回生車になってからも3,000両も作りつづけたため、性能やサービス上の不適合によって生じた損害は図りしれない。
(中略)
●走行性能の改善余地はあるか?
103系を使用する上での最大の問題点は、劣悪な高速性能である。ブンブンとモーターをうならせて長時間の力行をつづけても100km/hしか出ず、<スーパーひたち>が130km/hで快走する常磐線では103系が全体の足を引っ張っている。211系・213系以来の国鉄・JRの車両には、当面必要な最小限のパワーをもたせるという設計思想が見られる。209系もこの顕著な例で4M6Tという低いMT比にもかかわらず、モーターの出力が95kWしかない。このことは、将来の高速・高加速運転に対してMT比を上げて対処する事を意味するのか、性能向上を放棄することを意味するのか不明であるが、近い将来に要求されるであろうことに対処できていないのは気がかりである。

疑問点

通勤用標準車
いつの間にか位置づけられたのではなく、設計時点から、そういうコンセプトである。
だから、様々な線区の特性を比較して検討しているんだけど、様々な文献に当時の事が記載されているにもかかわらず、曽根氏には山手線用という思いこみが激しいようで盲目になっているようですね。
学者として盲目で良いのかどうか、私にはわかりませんが、趣味界にとってはエライ迷惑な話です。
走行性能の改善余地
103系が設計されたときのコンセプトは、当時の通勤線区に適合するような車両であった。だから駅間距離が短く、ノッチオフもせいぜい80km/h程度の路線向けだったので、主電動機をはじめとして低速トルクを増し、低速での引張力を大きく取っている。
それに対して、将来的なスピードアップなどが可能なように主電動機の熱容量も余裕があったほか、弱め界磁域を35%まで持たせる事で、101系並の高速性能は持たせている。
もちろん、100km/h時の引張力が1900kg程度というのは、他の形式に比べれば低い方ではあるが、それでも低速重視の形式にとってはかなり高めの設定であったと考えられる。
これら、将来的な走行性能の向上を見越した設計のおかげで、昭和44年からの東海道山陽緩行線への使用が可能になったと言える。
昭和47年3月改正以後は、特急以上の速度で走る新快速の合間を縫って、昼間のヘッド確保に貢献している。103系の性能では串刺しダイヤにするしか無かったが、それでも旧形国電を駆逐し日中のオール103系化によって、なんとか実現できた事である。
つまり、103系電車は、本来の性能である駅間距離が短い路線で適合するだけでなく、将来的なスピードアップでも使える性能を有していたと言える。
そもそも、昭和37年頃に設計している車両の将来的な改善余地を30年後の水準にする必要性があるだろうか?ほとんどの線区で緩急分離がなされる予定であった首都圏の通勤輸送改善が大きな目的であった同形式に対して、後ろから130km/hで特急が追いかけてくるのを逃げ切るだけの性能を求める事自体がナンセンス。というより高校野球の試合にプロが出てきて実力の差を示し、それに対して高校野球よ、もっと力をつけろ!みたいに言ってるようなもんだ。そんな比較をして何になるのか?という事だ。
要は103系は設計後10年経った昭和47年に、想定外の高速運転の必要が生じたが、103系は100点満点とは言えないが、それでも必要最小限の要求を満たす事ができた。それをして将来的な高速要求に対処したと言えないだろうか?
物事の比較というのは、難しいだろうが、曽根氏は色眼鏡でモノを見過ぎではないかと思う。

真鍋裕司氏の主張

鉄道ピクトリアル2005年8月号からの引用
103系の走行機器あれこれ
2.103系の走行機器
103系は当初山手線、京浜東北線等での使用を前提に、経済性を重視した設計をおこなった。
(中略)
3.おわりに
走行機器から見た103系は、それまで国鉄が一貫して守ってきた機器の標準化という観点から見ると、制御装置以外はきわめて特殊な仕様である。国鉄始まって以来の特殊設計車と言える。それが想定された線区以外にも投入され、3,000両余りも製作され、いつの間にか標準車として扱われるようになると、高速性能の不足が問題視され、批判されるようになってしまった。
しかし山手線用の特殊設計車として見れば、きわめてよく考えられた車両であったことは間違いなく、(後略)

疑問点

そこまで書くなら
山手線・京浜東北線などでの使用を前提にって書けるんだから、103系がどんな線区向けだったかはわかろうはずで、それがなぜ山手線専用の特殊設計車という風に変化するのかがわからない。
たぶん、このあたりも曽根氏の記事の影響が大きいと思うが、ちなみにMT55だから標準化ができていないというわけではない。MT55の部品の多くはMT54と共通だし、実際問題としてMT54では通勤電車を作れなかったんだから仕方がない。
MT55が特殊仕様と言うが、実際に103系を設計する時に投入を想定している線区の合計両数はゆうに1500両を超える。この数字は当時の113系や115系が必要とされる両数の2~3倍である。MT55は103系や301系という単一形式に近い車種にしか採用されなかったと言っても、十分大量生産によるコストダウンの恩恵は受けれたのである。
更に言わせてもらうならば、MT54搭載の通勤電車がどの段階でどの線区に必要なのかを、ほとんどの方がおっしゃらない。
常磐快速、東海道緩行線、この両線は良く出てくるが、この両線用に必要な車両数は何両だろうか?
そんな少量生産をする価値が本当にあるのかどうか。
JR化後に113系などのMT54付き車のロング改造車が出たが、その程度じゃダメなのか?どうしてもMT54に歯車比5.6程度の車両が必要なのか?その形式と103系との性能差やランニングコスト差などのシミュレーションはどの程度されているのか?
その当たりが全く見えないんですよね。
単に「はやけりゃ良い」という視点から、MT54の通勤車を求めていたという感じが非常にするんです。
ちなみに、この記事には103系の力行ノッチ曲線図が掲載されています。せっかくこういう図を載せるのであれば、他形式との運転性能比べでもしたら良いのにと思うんですけどね。ピクトリアルの85年の号でも力行ノッチ曲線図が掲載されましたが、この号も含めて図表の細かい説明は無いんですよねぇ。もったいない。


(書きかけです)



脚注

  1. 特殊仕様車であることは、当時の臨時車両設計事務所関係の諸文献に明示されている。
  2. 101系の床構造は防音、防振を考慮したものであるが、一時的に流行した先の細いハイヒールのため寿命が短くなり、103系では鉄板の上に直接乗客を乗せるのに近い構造となり、防音、防振、遮音特性が悪化した。