調査について

現状を見るに

旧形国電や旧形客車などが走っていた頃、鉄道研究は車両の外面だけではなく、車内の差異にも目が向けられていた。
それが、電車であれば101系以降の新性能電車以降の鉄道研究に置いては、ほとんど車内についての調査発表が残っていない。
ナゼだろう?
私は1997年からレイルマガジンという趣味誌で、車外・車内の詳細調査の結果を「完全制覇103系」という連載で23回に渡って掲載させていただいた。
そこで発表した写真の質が低かった事もあり批判を受けたこともあるが、私としては写真などは二の次で、メインは調査結果を発表した表にあった。
そのような発表を趣味誌に発表できたとはいえ、実際に調査をしている方の絶対数は少ない。
このままだと、本当に車両調査というジャンルは衰退してしまうのでは?とも思ってしまう。
ここでは、私が調査をした時のノウハウを少しだけ公表し、これから調査を始めようと思っている方に少しでも参考にしてもらえたらなと思っています。

調査なんか簡単?

調査の基本は「対象物となるものをじっくり見る」事から始まる。
そして「他と比較する」事で違いをチェックしていく。
簡単に言えば、それの繰り返しなのですが、違いがある程度分類できてきたら、わざわざ見比べてチェックするのではなく、チェック表などを作って、そのチェック表に見た車両の特徴を書き入れていく事で各車の違いを記録することができます。
それを繰り返していけば良いだけです。
ね、簡単でしょ。
違いの部分についてですが、昔はそういうのはメモ書きやスケッチで記録して残していました。
でも、今はデジカメがあるので、そういう道具を使えば安価に、そしてより正確な記録が残せると思います。
調査の楽しみの一つは、車両による違いを自らの手で見つけ出せること。
それは誰からも教わったものではない自分でつかみ取った栄光なのです。(ちょっと大げさ)

調査時の苦労

調査が簡単だと言ったけど、やっぱり全てチェックし終わるのには労力がいります。
これはどんな趣味にでも言えることで、その労力を怠ったのなら成果は期待できないでしょう。
そして、これらの苦労も全てを調査し終わった時に「やり遂げた」という満足へと変わっていきます。
そんな中で大変だなぁと思うのは、いくつかの違いを見つけて、それを元にチェック表を作って調査している途中で、新しい違いを発見したときですね。
今まで調査した車両も、もう一度この新しいチェック項目を調査しなければなりませんから。
でも、やり遂げたいと言う気持があれば、きっと乗り越えていけると思います。
そして、下で説明しているグループ分けで、今まで発表されていない新しい形態分類を発見した時には、今までの苦労も吹っ飛びます。
そういう醍醐味が車両調査にはあるのです。

グループ分け(形態分類)を行う

ある程度調査結果が揃うと、次にやるのはグループ分けです。
例えば車両の座席が他の車両と違うものが使われている車両があったとしましょう。
この違う座席を使ってる車両をピックアップして一つのグループにしてみるのです。
そして、これらの「製造年」「改造年」「改造工場」「転入年」などの基本情報に照らし合わせて見ると、思わぬ発見をすることが出来ます。
例えば「平成四年に郡山工場で改造された車両は座席がこういうタイプになっている」という風に絞り込めるわけです。
このようなグループ分けは車両研究の中で特に大事な部分ですが、旧形国電が全廃された後、新性能電車でこのような取り組みをされる方が少なく、結果として101系以降の新性能電車のグループ分け(形態分類)は全滅状態なのが実状です。

雑誌の形態分類は?

雑誌でも各種の形態分類は発表されていますが、基本的には内部資料を中心とした説明が多く、概論的な説明になっています。
ただ、 工事をする各工場(場合によっては電車区)によって施工方法が違う場合があり、それによって各種の形態が生まれるわけです。
その形態については、現車を見た者だけが知り得る事なのです。
その為には、各車のチェックを行い、その後グループ分けを行い、どのような形態分布があるのかを調べる必要があるのです。
そうすれば「長野工場ではこういう施工方法だ、でも新津ではこうだ」とか言う事が出来るわけです。
これらは、SL時代とか、旧形国電時代などは当たり前のように皆さんが行っていた事なので、決して難しいことをやれといっているわけではありません。
今の人は、ただ調査する方法を知らないだけだと思っています。

パーフェクトを目指さなくて良い

自分にある程度プレッシャーを掛けることは必要ですが、あくまでも趣味であるという点をお忘れ無く。 肩肘張らずに行きましょう(笑)
きっちりできない枝葉末節を語っても仕方が無いし、そういう調査は無意味と考える人も中にはいるでしょうが、そういう考えの人は自分で調査をしたことが無い人なんだと思えば気が楽になるでしょう。
実際、どんな調査も最初の1両から始まりますが、その段階では、将来的にとても大事な形態であっても、枝葉末節的な1つのポイントに過ぎません。
結局、調査というのは枝葉末節な事を繰り返し繰り返し行った結果、ある程度の形ができていくものなのです。
その形を見つけ出すという楽しみも、現車調査にはありますしね。
それに、一人が途中で挫折しても、他の人がある程度その先を進めてくれるかも知れません。
とにかく、そういう調査をする人が増えてくれる事が大事ですので、気軽に初めてもらいたいなぁと思います。

現車調査と資料調査

ここで書いているのは実際の車両を見ながら調査をする「現車調査」の方法です。
調査には、現車を確認する方法と、鉄道事業者の公式資料やデータなど(内部資料)をまとめる方法があり、こちらを「資料調査」と私は呼んでいます。
現車調査は比較的誰でもおこなえますが、資料調査は電車区などに赴いて資料を閲覧させてもらう必要があります。
私は、現車調査も資料調査もどちらも大切なもので、一長一短あると感じています。

過去の慣例に縛られる必要は無い

誰もやっていないから意味がないのではなく、誰もやっていないからやってやろう!
今の鉄道趣味は、なんだか廃車回送が走るからその時間だけ行くとか、なんていうか苦労して何かを求める事が減ってきました。
そんな中で、過去の慣例にとらわれず、逆に差別化するような方策を採る事が、硬直化を防げるのでは無いかと自分なりには思っています。
人がやっていないからダメという保守的な考えではなく、革新的な考えをどんどん実行に移していかないといけないと思う。
ビデオなんか記録にはうってつけだと思うけどね、後は整理の仕方をどするかとかあるんだろうけど。。。。。

現場には迷惑を掛けないように

現車調査派も資料調査派も、現場に迷惑をかけないというのが基本だと思います
例えば、この部分が何のために改造されているのか不明な時って良くありますが、それで現場に電話して聞いて良いものでしょうか?
それって、単なる自己満足の為に他人に迷惑を掛けている事になってしまいます。
でも、真相を知りたいですよね。
そんな時には、イベントなどを活用してみてはいかがでしょうか?
民営化後、電車区や工場などでイベントを良く開催するようになりました。
そこで聞くなら誰にも文句は言われないと思いますし、そういうイベントに参加する事は、イベントを企画したJRにも協力するという事です。
もちろん、せっかくのイベントですから、ある程度のお金はJRに落とすようにしましょう(^^)

2006.-2.-3 Nobuyuki Nagao