5分でわかる103系

2.103系の設計

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早く新形通勤電車を

早く新形通勤電車を

 101系通勤電車の失敗は、与えられている設備面の条件を考慮せずに車両単体でのみ高性能な設計にしたことにあった。101系を全性能運転するには、変電所などの大規模な設備投資を同時に行う必要があったのだ。当時の爆発的な輸送量の伸びに対応するためには、まず車両が必要であり、高性能車を走らせるために車両以外の設備投資が必要であるという事は、全く本末転倒と言わざるを得ない状況であり、101系通勤電車は早々と全性能運転をあきらめ、無動力の車両を10両中4両入れた状態※1で使われる事になった。
 この使われ方によって101系電車はモーターに負荷がかかってしまい、場合によっては旧形の電車よりも運転時間が長く掛かるケースも出てきた。
 そこで、101系の全電動車編成に無動力車を組み込むような付け焼き刃的な使い方ではなく、国鉄の事情に適した通勤電車を一刻も早く投入する事が望まれたが、101系の失敗があるために、まず状況を十分に把握し、どのような車両であれば一番この窮状を解決できるか、そういう観点から研究が始められる。101系が営業運転を開始してから2年後の1959年末の事である。

通勤路線に特化した車両

 1960年1月に国鉄運転局は「通勤電車の問題点」と称した小冊子を作成し、101系に代わる新形通勤電車の必要性を説き、その後通勤路線に必要な性能の査定などを経て設計に入っていくことになる。101系が高加速・高減速にて運転時隔を減らそうとしたのに対して、この頃にはその方法を採っても実際に得られる効果は少ない事がわかり、新形通勤電車の加速度は101系全電動車編成の3.2km/h/sから4M4T編成で2.0km/h/sと落とされたが、減速度は101系同様に高い数値を持たせた。
 これは、加速度を高めると電力消費量が増え変電所に負荷をかけるが、実際にそうのような運転をしても運転間隔短縮などの効果が薄いことがわかってきたため、性能と効果を十分に研究した結果として選定された値である。ただ、当時の国鉄電車では4M4Tという動力車と無動力車が半々の編成で達成したのは103系だけで、出力の大きな形式だと起動時に大きな電流を流さなければならず、通勤路線では実用に耐えれないわけで、これが事実上国鉄が示せる最高の性能だったのである。
 良く101系の3.2km/h/sと比べて大きく性能ダウンになったと称される事があるが、101系は一度たりとも3.2km/h/sなどという加速度で営業運転をしていないのだ。つまり、国鉄が有する都市圏のインフラでは3.2km/h/sなどの電車を走らせる事は不可能で、103系という低電力消費の車両を用いた状態で8両編成の2.0km/h/s程度、10両編成の2.5km/h/s程度の加速度が精一杯だったのである。

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