標準通勤電車の苦悩
国鉄の通勤輸送を一手に引き受けた感のある103系であるが、鉄道趣味という観点からすると興味を示す方は少なかった。これは蒸気機関車でもD51などでも見られた傾向であるが、コレクターの真髄は希少価値のあるものを手に入れることであり、どこでも見れるモノには興味を示さないケースが多かったため、結果として趣味者の多くが103系に対して興味を示すことは無かった。
また、もともと1.5km程度の駅間で最適化されている車両であるので、3km程度を越えると他の形式の方が総合的に有利になることから、駅間距離が比較的長い路線を使う場合には103系は適さないなどの意見を良く聞くようになった。
しかし、駅間距離が長い路線でも、本当に駅間が長いのはほんの一部の区間で、それ以外は103系であっても問題は無いのであるが、どうしても駅間距離が短い路線向けというイメージが強いため真偽を確かめないまま駅間が長いと103系に適さないなどの酷評を受け、先の希少価値のなさと共に、趣味者の間では非常に評価の低い車両として見られてしまう。
日本中に進出し通勤輸送に活躍
総数で3500両近い車両が作られた事は、それだけ103系が必要であったと言う事で、最終的に103系は仙台・首都圏・中京圏・関西圏・岡山・広島・福岡県などの通勤輸送に活躍した。
2009年11月現在では関西以西にしかその姿を見ることは出来ないが、国鉄時代に比べ様々な改造が施された事、両数が減ったために希少価値が出て事から趣味者にようやく振り向かれるようにはなってきた。
それが103系にとって嬉しいことなのかどうかは別にして、103系と言う電車は日本経済にとっても無くてはならないものであったのも事実であり、今では死語となりつつある「酷電輸送」を支えた。更に通勤電車に特化した性能とコストにより輸送力増強を推進出来るたとも言え、長い鉄道史にとっても103系のために一ページを書き記しても良いだけの活躍をしたと言える。
同一形式を20年にわたり作り続けた訳、それを考えたなら使用者が特に不満が無かった事を如実に表すものでは無かろうか?不満や不備があれば、101系が2年後に新形通勤電車が必要だと見切られたのと比較すると大きな違いはそこにある。
ファンがどんなに罵倒しようが、与えられた仕事をきっちりこなす堅牢さと信頼度は消えることはないのだ。
<番外編> 性能??
103系批判で良く聞くのは性能面で高速性能云々とか加速性能云々であるが、当時の民鉄の高性能車なども含めて「国鉄線上を走れたかどうか」を一度きっちりと検証してみたら、それらの形式が国鉄線上で営業運転が出来ない事がわかると思う。そういう国鉄線上で走れない車両を引き合いに出して103系の性能を批判する姿は、鉄道工学的に車両の性能を客観的に比較する事が一般的で無いからだと思う。このサイトでも少しずつ運転理論について説明していくので、それらを参考にして「民鉄の高性能車」が国鉄線を走れるかどうか各自検証してみてもらいたいと思う。
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