5分でわかる103系

3.救世主103系

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救世主103系

101系の限界

 もともと全電動車編成で高加速運転をする事が前提であった101系電車は、定格速度が50kmと高かったが、これは通勤電車では破格の値で、むしろ快速電車などの近郊形に適した速度であった。なぜこのように高い速度が選定されているかと言うと、全電動車なので加速が良く、駅間が比較的短くてもすぐに80km/h程度まで速度を高める事が出来たことと、モーターが持つ熱を走行中の風量で冷却する意味からも定格速度を50km台としたのだ。
 しかし、全電動車編成で無ければこのような高い定格速度の車両を通勤車両として使うのは得策ではなく、モーターの熱容量※1問題が発生してくる。全性能運転出来ない101系は旧形国電並の加速度と高速性能しか無かった事から、速度を高めるのに時間が掛かり、それだけモーターに電流を流すため熱量が増えた上に、速度がすぐに高めれないことから当初予定していた走行中の風量でモーターを冷やすと言う事がしにくくなった。平均時速で50km程度を確保できなければ、モーターに熱がこもってしまい故障の原因を作る結果となり、そのことから、駅間の短い路線では非常に使いにくい形式になってしまった。
 特に1961年から投入した山手線ではその傾向が顕著に表れ、8両編成では6M2T編成と言う協力編成を組んでもモーターが熱を持ちすぎる関係で運転に制約があった。

救世主103系

 103系の設計は、大出力モーター※2や電力回生ブレーキ※3などの技術試験の結果を待ち、その上で仕様を決めることになっていたため、構想自体は早かったのだが実際に設計にかかったのは1961年以降になって本格化していく。
  すでに101系電車は駅間距離の短い山手線などにも投入される事が決まっており、前記のモーターの熱問題から6M2T編成で投入しても制約※4があり、その状態でも旧形電車と同等又はそれ以下の性能しか出せない101系をこれ以上増備する事は将来的にも無駄が大きく発生する事は間違い無かった。
  103系は東京・大阪圏の主要な路線の駅間距離や運転時分などを調査して、その結果として仕様が決定されたが、通勤路線と言う事で平均1.36km程度の数値を出して、概ね1.5km以下で省電力ながら運転時間を短く出来る車両として設計された。
 そのような状況下で設計された103系は、国鉄のどのような路線にも設備の制約なしに運転する事ができたので、将来的に東京や大阪をはじめとする広域転配が常であった国鉄用の車両として、この制約の無いというのは非常に使い勝手が良いのである。
 こうして、通勤路線に特化した新形通勤電車103系は1962年度末に試作車が完成する。

103系の特徴

 103系は8両編成の場合101系が6M2Tでないと走れなかったのに対して4M4Tの組み合わせで良く、それでも101系と同等の運転が可能な性能となった。加速度自体は2.0km/h/sであったが、その加速度を低電流で出せたことが一番の特徴で、このことにより103系は非常に設備に優しく、また装備しているモーターにも優しい車両となった。
 当時の国鉄のインフラを考えるなら、これは大都市圏の通勤輸送を解決するために非常に大事な事であり、このような特徴があったからこそ国鉄は各路線の新性能化に103系を大量に投入することができたのだ。
 特に、高加速でスタートダッシュの効く事から、モーターに流す電流量も少なくて済み、抵抗制御と言う加速時に抵抗器で電気を熱に変えるような非効率なシステムでありながら、抵抗を抜けるのが35km/h程度と低く、加速度の高さと相まって出発から20秒経たないうちに抵抗を抜けるとても効率的なシステムとなっている。
 低速での加速度を高め、高速域は弱め界磁制御を用いる事で、通勤電車として用いるには問題無い高速性能も有していて、どこをとっても効率的な考え抜かれた設計となっている。

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