電車運転理論入門

03 少しだけ基本的なことを

ホーム 103系の為の運転理論 鉄道ピクトリアル2010年6月号運転理論に異議あり 

頭の悪い私でもわかるんだ!

 こんなことを言っちゃ元も子もないが、私は勉強が大嫌いだから、物理だの数学だのの公式など大嫌いだし、未だに覚えたいとも思わない。それは自分にとってあまり役に立たないというのがあったからで、逆に今思えばちゃんと覚えておいたら今とっても楽なのにと思う事もあるが、それでも、難しい事を覚えて無くても計算は出来る。
 計算は出来るが、闇雲にやろうとしても壁にぶち当たると思うので、ここでは少し基本的に知っておいた方が良いことをいくつか書いておきたい。
 基本的なことだから、わかってる方は当然読み飛ばしてもらって結構。むしろ、わかってる方の方が多いような気もするが(笑)

力学的に運動について語る為の要素

 いきなり、難しい言葉だぞ。力学的って何やねん。おれらの時は「物理」って言ってたと思うんだが、高校で習う程度のことがわかってれば良いような気がする。私は物理と化学は5段階評価で5だったが、別に得意だからとかじゃなく、単に公式に数字を当てはめたら解けただけで、好きだからとか理解していたからではない。
 それが証拠に、当時の公式など全く覚えていない。フレミングの右手やら左手やらの法則なんて、あぁそんなのあったよな程度だ。私にとっては目に見えない電気なんてどうでも良かったし、モノを落とした落下速度がどうなろうが知ったこっちゃない。落ちたら地面の方にさようならってだけだし、電気はびりっとくるから怖いってことくらいしかイメージは無い。
 そんな奴だから、はっきり言って力学とか難しい言葉には弱いが、こうやって運転理論を語ろうと言うのであれば基本的な部分は知っておかねばなるまい。
 んなことで、運動エネルギーがどうのとか、そんなことは言わないけど、知っておかなければならない要素をいくつかあげておく。

質量

 質量と言うのは、簡単に言えば「重さ」のことだ。質量なんて言い方をするから難しくなる。自分が何かを持ち上げる時のことを考えたら良い。重いモノは力がいる、軽いモノは力がいらない。
 電車の運転理論も同じだ、重ければ同じスピードを出すにも力がたくさんいるし、軽ければあまりいらない。だから、運転理論的には列車全体の重さと言うのは非常に大事な要素になってくる。
 一応、運転理論上では「荷重」と呼んでいる。

 力と言っても、何のことやと思うよなぁ。電車の場合は動力源だと思ってもらって良い。蒸気機関車だと蒸気でピストンを動かして動輪を回すわけだから、その蒸気の圧力などを調べればいいし、電車だとモーターによって車輪を回すわけだから、モーターの回転について調べれば良い。動輪が回る力については、運転工学的には「動輪周引張力」という小難しい言葉が使われるが、面倒なので「引張力」と言う表現を使う。
 引張力はモーターの回転する力、回転力やトルクと称しているが、この回転する力がギア比や動輪の大きさによって、実際に線路に接する面でどの程度の力になってるか計算したもので、モーターの性能グラフである「主電動機特性曲線図」には回転力が、実際の形式に合致したギア比や動輪の大きさを加味した「力行ノッチ曲線」には引張力として記載されている。下のグラフの縦軸にある単位で確認してもらいたい。
 力行ノッチ曲線がある場合は、引張力を用いるが、架空の形式などでギア比や動輪径を独自に設定する場合などは主電動機特性曲線図から引張力を導き出す。
 とにかく、引張力ってのは電車を引っ張るためのもので、加速の元だから、この数値がわからなければ加速度計算と言うのは出来ないというとっても大事な要素だ。

抵抗

 抵抗と言うのは、イロイロな場所で使われる。要は邪魔なものと言う事だ。列車が走ろうとするのに風圧は邪魔なものだし、抵抗制御の場合は回路の中に邪魔なものを入れておいて電流量を調整すると言うような感じだ。抵抗勢力と言えば、自分にとって邪魔な存在だが、まぁぶっちゃけそういう意味合いで思っていて問題無い。
 運転理論的には多くの場所で抵抗と言う言葉が使われる。起動抵抗は列車が動き出すときに車輪を回す時に必要になる抵抗で、走行抵抗は風圧などの抵抗、勾配抵抗は上り下りの時の抵抗でこれは下り勾配だとマイナスって事になる。他にも曲線抵抗やらトンネル抵抗なんかもある。
 が、ありがたい事に、エライ方々のおかげで、これらはちゃんと公式になっていて、使う我々は走行抵抗で「編成重量」「編成両数」「速度」の3点を必要とする以外は、起動抵抗や勾配抵抗・トンネル抵抗は固定値だし、曲線抵抗も簡単な割り算で求まる。
 抵抗制御時の抵抗は、電圧を急にモーターにかけれないために入れるもので、抵抗体により熱になってしまうため浪エネルギーと言われるのだが、基本的には電機子チョッパ制御が出来るまでは抵抗制御であった。(交流車はここではあまり触れない)界磁チョッパ車も起動時は抵抗制御と同じでブレーキ時に界磁を操作して回生ブレーキが効くようになっただけで、力行時には今まで通り抵抗損失が発生していた。これは界磁添加励磁制御でも同じだが。
 交流車ではこの抵抗での制御をサイリスタを用いたりした位相制御やらなんやらで連続制御できるようになったものもあるが、私はまだこのあたりは勉強していないのでわからない。103系に関連するのは基本的に直流車なので、当面は覚えたりしようとは思わない。(それより直流車の方をもっと詳しく取り組みたいんで)

電圧

 国鉄で直流だと1500Vってのが多いけど、昔は600Vとかあったようで地方私鉄を買い上げたような買収国電の場合は750Vとかいろいろあったみたい。
 運転理論で電圧を語る場合二種類の部分がある。架線電圧と端子電圧で、架線電圧はその名の通り架線の位置での電圧であり、端子電圧と言うのはモーターに掛ける電圧のことだ。101系以降の国鉄新性能電車に絡めて話をする場合、特殊な路線を除いて国鉄線は架線電圧が1500Vであったので、ここでも架線電圧は1500Vを基本として考える。
 また、端子電圧は1M方式とMM'方式や抵抗制御時の直列・並列の種類で変わってくる。つまり1M方式ではモーターが4つなので、架線電圧1500Vを4で割れば端子電圧は375Vになるが、これは直列につなげた場合であり、抵抗制御車は基本的に直列でつなげて、途中から並列にしてしまう。
 だから、最初はモーター4個が順番に並んでいるから1モーターあたり375Vになるが、並列段以降は、2モーターが2セットと言う事になり、モーター1つあたりには750Vの電圧がかかることになる。
 MM'方式では2両8個のモーターがあるので、全て直列に並べると端子電圧は187.5Vだが、並列段以降は4モーターが2セットになるので、端子電圧は375Vになる。
 また、国鉄では性能を査定する際に1972(昭和48)年までは架線電圧が1割下がった状態の1350Vであると仮定してその値で計算していたが、実際の架線の状態を調べると1600V以上の所が多く十分な電圧が確保されているとの判断から、力行時に1割の電圧降下が起こっても1500Vと見て良いと言うことで性能曲線図も1500Vが基準となった。

電流

 電圧と良く混同するのは私だけか(笑)普通は「電気」としか呼んでないんで、区別する必要も無いのだが、運転理論上の電流と言うのは、モーターの力と少し関係する部分がある。
 モーターの力、すなわちモーターのトルクは、直流直巻モーターの場合、電流を多く流せば大きくなる。つまり、電流の増減はモーターの力の増減でもあるのだ。
 限流値は起動時の電流量を調整する設定値であるので、限流値が大きければそれだけモーターは力強い動きをするので加速は良くなる。逆に限流値が小さければモーターの力は小さくなるので加速は悪くなる。
 ただし、加速についてはモーターの特性も関連するので、単に電流の値を比較するだけでは加速の良し悪しを比較する事が出来ない。MT54の300A時の回転力とMT55の280A時の回転力だとMT55の方が大きな値になっている。
 いずれにしても、電流量は運転理論で条件を語る場合に大事な部分である。
 

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