103系のための運転理論

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運転理論の重要性

運転理論の重要性

 運転理論とは物理や力学的な計算を用いて、実際に車両を運転することなく、車両の性能をシミュレートする事を言うのだが、今までの鉄道趣味界でそれを語る事は一種のタブーでもあった。しかし、103系のみならず性能に関して主観的な意見がまん延し、その信憑性が疑われる中、運転理論を用いた客観的比較による理論武装は、これからの車両研究を行う趣味者は最低限避けて通れないものではないかと考えている。
 列車の運転というのは、非常に様々な要因が加味されており、特に実車による測定だとバラツキが大きくなる恐れがある事から、客観的比較として、このような理論を使って行く事は公正な評価をするためにも今後非常に重要になってくると確信している。

理論が語られなかった理由

 過去の趣味誌を見ても、運転理論の解説をしたケースはほとんどない。唯一の例がレイルマガジンで1987年頃に連載していた「ハイテク電車ファン入門」で具体的にランカーブの書き方などを説明したのがあった程度と記憶する。
 しかし、ここで用いた形式が民鉄の一形式であったこと、読者が自分で計算するための資料が無いことなどから、これらの手法説明は、残念な事に単にそこで説明された形式のみの話題という認識にとどまったようだ。
 特に、自分自身で計算をするには、下図のような力行ノッチ曲線が最低限必要となってくるが、過去の趣味誌にはこのような図表は多く登場しない。しかし一般読者でも入手が可能であった「電気車の科学」や「電車」などの専門誌にはこのような図表は数多くの形式で公開されてきたわけで、趣味者が全く情報を得れなかったわけではない。情報はあったが、その有効な使い方が一般的に知られていなかったと言う事なのだろう。

MT54力行ノッチ曲線

知っていても語れない

 鉄道事業者の車両関係に関わる方が、これらの点を知らないわけはないのだが、理論は理論で現実とは違うのは当然の話ですから、なかなか理論を前面に出しての比較がしにくかったのではないかと推測している。
 特に鉄道ファンは、非常に細かい事にうるさい部類に入るため、変に誤解を招くような記述をして、その説明のために労力を掛けたくなかったという部分も多かったのかも知れません。

定格速度で何がわかるのか?

 定格速度と高速特性は相関関係に無いのだが、運転理論が知られていない為に、鉄道ファンは車両の特性を評価する上で定格速度や歯車比を用いるケースが多かった。もちろん、それには一理あり正しく用いれば問題が無いのではあるが、一部に誤った使い方がなされていて、その誤った使い方がメディアに乗って流れてしまったからもう大変。
 その結果として定格速度が低い103系は性能の低い車両と言うレッテルを貼られてしまったように思う。もちろん、きちんと運転理論的に調べた結果「103系のこの部分は弱いね」という話題なら大歓迎なのだが、A=Bという短絡的思想で「定格速度は低い=高速性能が無い」とされると少し困ったちゃんになってしまう。

個人が主張できることは少ないが

 ここでは、順次運転理論に基づいた計算方法や計算結果を示しつつ、様々な形式の様々な条件での比較を行ってみて、実際に103系電車というのがどのような特性があり、他の形式と比較してどういう点でメリットがあり、どういう点でデメリットなのかを、主観的な「感覚だけの評価」ではなく、できるだけ客観的に誰が導き出しても結果が同じになるような方法で行っていきたいと思う。更新はスローペースだが、資料類も多く掲載していき、将来は多くの方が自分自身で運転理論に基づいた客観的比較ができるようになってもらえれば嬉しいなと思う。

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