異議あり!

鉄道ピクトリアル2010年6月号の運転理論

04
一夜漬けに感じるのは

ホーム 103系の為の運転理論 電車運転理論入門

一夜漬けに感じるのは?

 運転士が運転理論をどの程度学ぶかについては、動力車試験などで必要だからと言う部分が大きいと思う。しかし、動力車試験用の運転理論の問題は、とても実際の運転を模範したものではなく、あくまでも公式を覚えているかどうかと言う観点から計算がしやすくなっている。
 だから常に加速度が変わる列車の運転についても、平均加速度がいくらと言うような設問の仕方をするし、刻一刻と変わる加速度から時間や距離を求めるには、細かく運転状態を区分けして、そこで計算した結果を積算していかなければならない。だから、こういう実際の運転に即した問題は、試験問題に出せないのである。
 で、記事で著者は運転士が運転理論を知らないはずは無いと書いているが、それは当然のことであって、どんな運転士でも運転理論につての勉強は必ず行う。
 が、試験問題と実際の事案が違う事は問題の内容を見れば誰だってわかる。そういう試験問題を解くための運転理論の勉強をしたからと言って、それは運転理論を理解したことにはならないのだ。
 この著者は某所で意見交換をしたことがあるのだが、このように数字による性能差を語り始めたのはピクトリアルが発刊されるわずか前からであり、それまではこのような理論的な会話には参加すら出来ていなかった。
 また、ずっと運転理論を研究してるモノからすると、このようなテキスト丸写しの表は作成しないだろう。いや、表自体はテキスト通りでも良いのだが、項目名まで同じにする必要など全く無い。なぜテキスト通りなのかと言うと、自分の言葉に言い換えれない、つまり運転理論に精通していないからではなかろうか?

図3

 左が今回のピクトリアルの記事の引用、右が交友社の「電車運転理論」P.121-122の表からの引用だが、項目名が驚くほど類似している事がわかるかと思う。特にD欄にある(C÷W)だが、ピクトリアルの記事のどこを見渡してもWなんてのは書かれていない。
 Wとは荷重の事で、電車運転理論の表には「電車総重量W」と言う記述が欄外にあるので、そこでWとはこの数値である事がわかる。それ以外にも引っかかったのはF欄の「1トンあたり加速力」で、確かにそれで間違いではないのだが、運転理論ではここまでかみ砕いて書いたりしない。単に「加速力」とすれば単位はkg/t※3なのだ。
 ピクトリアルの表では勾配上の平均加速度を追加したり(単に勾配の数字を引くだけですが)H欄では教本の方のが加速力を用いているのに対して、ピクの方は平均加速力を用いてる所から、より現実に近いように変更してくれてるようですが、ほぼ「電車運転理論」に掲載された表のままですね。
 ピクの本文中P.98には「この計算用紙はもともと駅間ごとのランカーブ(運転曲線)を手書きで描けないだろうかと考えて作った」とあるが、どう考えても自分で考えたのではなく、本の丸写しじゃ無いかと思う。
 運転士だから知っていて当然と豪語した以上、その程度の事を常に考えていたとでもしておかないと、つじつまが合わなくなるのだが、表の項目名や、不公平な性能比較をしてる点を考えるに、ちょっと運転理論をかじった事がある者が記事を見たら「なんだ、この運転士偉そうに書いてるけど、一夜漬けじゃないのか」と思うに十分なのである。

Copyright(C) Nobuyuki Nagao,All Rights Reserved.