異議あり!

鉄道ピクトリアル2010年6月号の運転理論

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201系の弱め界磁移行速度

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問題と考える記述

2010年5月電気車研究会発行 「鉄道ピクトリアル」2010年6月号 P.97-P.101
「国鉄通勤近郊型電車の性能曲線を読む」

P.101の「その弱め界磁投入が43km/h付近と低いので、そこからぐっと加速が落ちる。客室に乗っていても、この43km/hの切替は、軽い衝動と共に感じる事が出来る」

問題と思えた部分

 弱め界磁に入る速度と言うのは、つまるところ全界磁に到達する速度と言えるが、応荷重装置を用いた場合は限流値の値がどうなのかで全界磁に達する速度が変わる。であるから、43km/hで弱め界磁に入るという表現だと応荷重装置を使わない形式であればそれでも良いが、応荷重装置を使う形式の場合は乗車率で速度が変わるわけだから「空車時に43km/hで弱め界磁に入る」などとしなければならない。

それがなぜ問題なのか

 条件によって車両の性能は変わってくるのだが、その部分がわからなければ形式間での性能比較などできない。
 同一形式であっても、乗車率で答えが変わってくるわけだが、こういうのは性能曲線から情報を抽出する際には基本的な部分なのだ。


図1 201系ノッチ曲線

 図1にあるように、43km/hというのは500アンペア時の全界磁(通流率0.97)の速度で、その数字自体は特に問題ではない。しかし、201系は応荷重装置を用いて、限流値が空車時500アンペア〜積車時680アンペアと変化する。
 積車時の限流値680アンペアとした場合に通流率0.97になるのは、37km/h程度であるのは図から読み取れるであろう。
 Jトレインの33号で本人が「201系は40k/hくらいで軽い衝動がある」と書いてる通り、約40km/hとしておけば何の問題も無い記述に思うのだが、こうやって「性能曲線を読む」という題目の中で出てくるきちっとした数字と言うのはそれ自体に重要な意味合いがある。つまり、弱め界磁に入るのは常に43km/hと言うふうに読者はとってしまうのだ。
 ちょっとした事なのだが、きちんと性能曲線図を読んでいれば、こういう間違いは起こらない。記事のタイトルは「性能曲線を読む」となっているが、こんな事だと性能曲線を読んだとは言えないと思う。
 ちなみに、性能曲線図は架線電圧が1500Vの場合であるから、実際の運転時においての状態とは一致しない場合もある。特に中央線は架線電圧が1700V以上あるし、起動時にグッと架線電圧が下がるが、場合によっては1500V以下の場合もある。だから、必ずしも乗車中に同じ乗車率であっても、同じ速度で切り替わるとは言い難い。その点、理論と実際の違いは注釈としてでも入れ込んでおく必要があったかもしれない。

こう考えたのかも

 読者の中に性能曲線図を読める人などいないだろうから適当で良いと思ったとは思いたくないし、素人はだませても同業の運転士からはおかしいと言う突っ込みは当然入るので、間違いを承知で書いたとは思えないため、単に性能図の読み方を知らなかったという安易なミスだと思う。

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