異議あり!

鉄道ピクトリアル2010年6月号の運転理論

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101系のオフブレーキ運転

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問題と考える記述

2009年2月イカロス出版発行 「Jとれいん」33号 P.106-P.107
「運転士から見た201系」

P.107の「101系や201系ではオフブレーキが使えたことです」

問題と思えた部分

 熱容量の少ない101系でオフブレーキが日常的に使えたと表現すること。

それがなぜ問題なのか

 オフブレーキ運転とは、遅延時の回復運転などで、目一杯力行して、すぐにブレーキをかけるのが一番駅間での運転時間が短いことから、惰行せずにすぐにブレーキを掛けて駅間での運転時分を短くするための運転方法を指す。
 だから、駅間運転時分の全てにモーターに電流が流れており、モーターに負荷が掛かってくる事になるのだが、101系に使われているMT46Aは熱容量が小さく(これは絶縁種別が電機子特B種・界磁H種(と言ってもハンダの制約で許容温度はF種以下の150℃) である点もあり、負荷を大きく掛ける運転だとモーターの寿命が短くなり故障の原因を作る。
 更に101系は全電動車編成で使用する事を前提に設計されていたので低速での引張力が低く、定員乗車6M4Tで2.0km/h/s程度の加速度を確保するために限流値を380Aに設定しており、一時間定格電流300AのMT46Aにとって380Aを限流値にする事はすでに2割以上の負荷をモーターに掛けていることになる。
 モーターの寿命(絶縁材の寿命)は温度が8℃上がれば半分になるとの統計があり、それでなくても熱容量が不足気味で負荷の高いMT46Aを用いた101系をオフブレーキ運転するというのは、車両保守の点でどうなのだろうかという疑問が生じる。
 無理に走る事は可能だが、この ような状況で「走れる」と公言するのはいかがなものだろう?最低限、注釈を入れるなどの配慮は必要であろう。
 このような点で103系と比較する事の不公平さは感じる。103系がオフブレーキ運転をするとブレーカーが飛ぶのであれば、101系はオフブレーキ運転をするとモーター寿命を縮めるとでも書いてあれば公平とも言えるのだが・・・

こう考えたのかも

 あくまでも運転が出来るかどうかという部分であり、その後その道具がどうなろうが知った事では無いというような考え方であれば、このように語れるのではないかと思う。つまり「私は東京タワーから飛び降りることも可能だ」と書いたら誰だって「無理だ」と考えるだろうが、私が絶命を前提ですると言ってるのであれば実行することは可能だからだ。
 要は、101系のオフブレーキ運転が出来るのは間違い無いが、常用することで機器に負担を掛けてるという点を考慮しなかったと言う事なのだろう。

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