異議あり!

鉄道ピクトリアル2010年6月号の運転理論

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電車の加速を等加速と間違ってる

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問題と考える記述

2010年5月電気車研究会発行 「鉄道ピクトリアル」2010年6月号 P.97-P.101
「国鉄通勤近郊型電車の性能曲線を読む」

P.99に記載した「tは任意の速度に達するまでの経過時間(秒)である」(下記は同誌から引用)

問題と思えた部分

 この式は等加速度運動をしている際の時間を得る公式で、一般的な電車列車が起動から一定の速度に達するまでの時間算出に使ってはならない。

それがなぜ問題なのか

 列車は等加速度運動をしておらず、常に加速度を変えながら走行しているわけだから、こういう公式で距離や時間を算出することが出来ない。きちんと計算するには下記の式を使って速度を細かく区分けして積算していく。
(交友社「電車運転理論」P.68から引用)
 αは加速度でv2とv1はそれぞれの速度差と言う事になる。簡単に言えば加速度αが2.5km/h/sであった場合に、40km/h(v1)から45km/h(v2)まで加速するのに要する時間は(45-40)÷2.5=2秒となる。
 言われてみたら誰だって知ってる、誰だってわかる公式なのだが、この式を用いていないので、115系や201系などの表2〜表5などの100km/hまでの所要時間が大きく狂っている。
 第3章「運転士は正しいのか」でも少し書きましたが、間違った式を使う事で正確な判断が出来なくなってしまっています。
 ちなみに、等加速度運動の式も運転理論の中で使います。どういうところで使うかは加速度が一定の部分ですから、起動時と減速時です。運転理論の本にも「起動時または減速時でv1またはv2の値が0の場合はこの式を使っても良いと書かれています。

こう考えたのかも

 Jトレインの時に直接著者である松本氏に「100km/h到達時の距離の長短で加速を見るのは間違っていますよ」「その考えは等加速度運動だから一般に使えませんよ」と指摘したのだが、それにも関わらずこういう間違いの式を用いて計算していた所を見ると、自分の考えが一番で、他からの聞く耳は全く持っていなかったと言う事になろうか?
 その時に他人の忠告をマジメに聞いていたら、こんな恥をかくこともなかったと思うのだが、なぜマジメに取り組まなかったかはわからない。たぶん、絶対的な自信があったのは、運転士としての自負だろう。
 運転士が運転理論を学ぶと言っても動力車試験に通るために少し学ぶ程度で、実は本格的な理論は学ばないし、試験の問題も暗算で出来る程度のものでないと、受験者が解けないという問題点もあるようで、全体的に動力車試験に出る運転理論の問題は非常に易しい。
 列車が起動してから何キロになるまでの実際の時間や距離などの計算は、動力車試験を受験するための運転理論では出てこないと言って良い。
  下は昭和61年の第一回甲種電気車試験の問題の運転理論の部分の抜粋である。

電気車の科学1986年11月号P.50から引用
 3番は性能曲線の見方だが、縦横の数値と、1000分の20を20パーミルと読み替えるなど、自分がどの曲線を見なければならないかさえわかれば誰だって解ける。答えの所は切りの良い数字になってるのがわかるかと思う。
 で、運転曲線だが、4番の問題のように全て直線で表される。だから、計算式も等速運動とか、等加速運動とかの計算でOKだ。(1)は10km/h速度を上げるのに80秒要したんだから単純に割れば良いし(2)はA-B-Cと140で結ばれた台形の面積を求めれば良い。時速50kmで30秒間(等加速なので60秒の半分)移動した距離と時速50kmで80秒間移動した距離を足す、即ち時速50kmで110秒走る距離と同じと分かればすぐに解ける。
  だから、松本氏も自分が運転士免許を受けたときの運転理論レベルが前提にあったのではないかと推測するわけです。それだと実際には細かく速度毎に区分けして計算しなければならない走行時間計算を、ばっさりと等加速運動の計算式で扱ったと言うのもつじつまがあいますので。

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